何かをやりきった人にしか見えない景色があるはずです。
まずは、自分の一番近くにある、その景色を見てみませんか?
きっと、世の中の見え方が変わるのではないでしょうか?
歌舞伎俳優の坂東三津五郎さんが亡くなられましたね。
まだ59歳。
中村勘三郎さん、市川團十郎さん、と立て続けに歌舞伎界の至宝が若くしてこの世を去られて、三津五郎さんまで……。と思うと、残念でなりません。
私事ですが、歌舞伎はわたしにとって大人になってから両親と一緒に同じものを体験する機会を持った数少ないもののひとつです。実家から近い名古屋の御園座で春秋に歌舞伎公演がありますので、3人でそれを見に行くというのが、一時期恒例行事でした。
東京に来てからはちょっとその機会もなくなってしまったのですが、東京は年中歌舞伎公演があるので、その気になったら見放題……! でも、いつでも見られると思うと案外行かないもので(笑)、実は東京では歌舞伎公演を見たことがありません。今年こそは!と思っていたのですが……。残念です。
告別式で、長男の坂東巳之助さんが、このような喪主挨拶をしていらっしゃいました。
まだ、まだまだ若輩者、未熟者の私がこんなことを申しますのははなはだ生意気かと思いますが、父の芸というのは、誰にでもできるような小さな努力を、誰にも真似できないほど膨大な数、積み重ねた先にあるひとつの究極の形だったのではないかなと思います。
誰にでもできるような小さな努力を、誰にも真似できないほど膨大な数積み重ねた先にある、ひとつの究極の形。
誰にでもできるようなことを、誰にも真似できないほど膨大な数積み重ねる。なかなかできることではありません。
無駄な努力をしても、その先に成功はありませんが、必要な努力であれば、やった数だけ成果に近づくものです。
日々生きていれば、面倒なこと、やりたくないことだってありますよね。
こんなことして何になるのかな……。とか。
やったことがすぐに成果につながるものとは限りません。
でも、たいていの場合、結果が出るのは少し遅れるものなんですよね。
遅れて結果が出るまで、手を休めずにやるべきことを続けることができるか。これ結構大切です。
そんなこと言っても、歌舞伎の世界のことだから、歌舞伎の名門の家に生まれた人は誰でも花形役者になれるのだから。普通にやってれば役がもらえてスターになれるんでしょ。
そう思われますか?
違いますよね。脈々と伝統が受け継がれている伝統があるから、歌舞伎の名門の家に生まれたからこそ、ごまかしの効かない、厳しい世界があるはずです。
その世界で生きることを選択したからこそ、花形役者でも、いいえ、花形役者だからこそ、自らを厳しく律して、学び精進し続けるのではないでしょうか。
もし、今、自分が何をやればいいのか、何をめざしたらいいのか、迷い立ち止まってしまうようなことがあるなら、まずは今の自分がいる場所を大切にしてください。
誰にでもできるようなことを、誰にも真似できないほど膨大な数積み重ねてみてください。
何かをやりきった人にしか見えない景色があるはずです。
まずは、自分の一番近くにある、その景色を見てみませんか?
きっと、世の中の見え方が変わるのではないでしょうか?