ビジネスのスタートアップ期は、限られた経営資源を活用して、最大限の効果を上げることを意識しなければなりません。
そのためには、まずは絞り込んだマーケットに向けて徹底的に露出して、ファンを獲得する必要があるのです。
では、どのようにマーケットを絞り込んだらいいのか? そもそも、マーケットの絞り込みってどういうことなのか? 自分のビジネスにも関係あるの? 等等、「マーケット(お客さま)の絞り込み=ターゲティング」についてのお悩みをよく伺います。
では、まず、「ターゲティング」がいかに大切かということを、例を挙げてお伝えします。
スタートアップ期の起業家は問題児
ブログ記事
ジャニーズ事務所をPPMで分析してみる
の続きです。
起業家が取り入れるべきビジネス戦略、特に「ターゲティング」の大切さを説明するのに、何かいい題材がないかな〜と考えていたのですが、PPM分析の考え方で整理するとわかりやすいことに気がつきました。
で、どんな事例でお伝えしようかと思っていたところ、ジャニーズグループの売り出し方、しかもKis-My-Ft2こそが、おあつらえ向きの題材だということに気づいたんです。(なんと、わたしの超得意なネタ!! 笑)
というわけで……。
Kis-My-Ft2が売れたのは、適切なターゲティングと優先順位をつけた戦略に基づいた行動だったということを、PPM分析に基づいてお伝えします!!
が、その前に、おさらいをしておきましょう。
スタートアップ期の起業家のビジネスは、PPMのポートフォリオで言うと「問題児」のゾーンに属します。
「問題児」ゾーンに属するビジネスは、市場成長率は高く、マーケットシェアは低い状態です。
ここでマーケットシェアを獲得するためには、まずは絞り込んだマーケットに向けて徹底的に露出してファンを獲得する必要があります。
ここまでが前提として押さえておいていただきたい知識です。
では、お待ちかねのKis-My-Ft2分析です。
問題児のスター、Kis-My-Ft2を分析
ジャニーズ事務所で「問題児ゾーン」に属するグループで、現状、最も成果を上げることができているのが、Kis-My-Ft2ではないでしょうか。
彼らがマーケットシェアを獲得するために、ある特定のマーケットに向けて、徹底的に戦略的作戦行動を取った結果が、デビュー以来、CDシングル13作連続オリコン週間チャート1位、デビュー3年目にして4大ドームツアーという成果として現れています。
彼らが取った戦略的作戦行動は、大きく2つあります。「ジョイント」と「格差売り」です。
この戦略をとることによって、デビュー前とデビュー後の彼らの見せ方は、全く変わりました。
デビュー前からのファン以外には全く知られていなかったKis-My-Ft2、デビューするからには、まずは一般認知度を高めなければなりません。
そのために取った最初の行動は、すでに知名度のある先輩とのジョイントです。いわゆる「バーター出演(主にSMAPとの共演)」ですね。
SMAPと一緒にバラエティ番組やドラマに出演することによって、Kis-My-Ft2を知らないお客さまにも彼らを知ってもらうきっかけを作ったのです。
そしてもう一つが格差売りです。
これは、デビュー時に「前の3人」と言われるフロントメンバーにしぼって、徹底的に露出を増やして認知度を高める作戦を取りました。まずは、前の3人の知名度を上げることに集中したのです。
フロントメンバーはキラキラ衣装、後ろの4人は地味な衣装、「3人グループに4人のバックダンサーがついている」と見えるような状態でライブや歌番組に出演していました。バラエティ番組の出演もフロントメンバー中心、全員で出演しても、コメントを求められるのはフロントメンバーばかり、といった状態が続きました。
これらの作戦のターゲットは若い女性です。つまり、前の3人のカッコよさを徹底的に露出させることで、若い女性ファンの獲得をめざしました。この作戦によって、前の3人の知名度は上がってきました。
次に取った作戦が「後ろの4人」の売り出し作戦です。
それは、SMAP中居くんプロデュースによる「舞祭組」デビューです。(詳細はコチラ)
「舞祭組」で狙ったのは、Kis-My-Ft2でまだできていなかった新しいファン層の獲得です。ターゲットは、彼らと同世代の男性サラリーマンです。従来のジャニーズの戦略では、おそらく狙ったことのない層です。
カッコよさではなく「ブサイク」「売れていない」を売りにして、キラキラ感皆無の地味なスーツで「とにかく一生懸命」な姿を見せることで、サラリーマンの共感を得ることができました。
「ジャニーズは好きじゃないけど、舞祭組は好き」
「Kis-My-Ft2って、何かおもしろいよね」
今や、このような感想を持つライトなファン層も増えましたね。このような作戦を取った結果、Kis-My-Ft2は、グループを大きくパワーアップさせることができました。
問題児が花形に移行するには
少なからず、デビュー前から固定ファンがついていたKis-My-Ft2、それは、全くゼロからデビューに比べたらアドバンテージがありましたが、従来のファンだけをファンとして捉えていたら、人気の広がりは見込めません。
デビューするということは、CDを売るというのが至上命令です。いわば、CDを買ってくれる多くのファンを獲得しなければなりません。グループとして大きくなっていくためには、どうしても必要なことです。
自分たちの強みが最も刺さるお客さまに向けて徹底的に露出してファンを獲得する。そのために、見せる強みを絞り込んで集中して見せる。
特定のマーケットでシェアを獲得することを、まずめざしたのです。成果が出たことを確認した上で、新しいのマーケットに向けて次の手を打ったのです。
バーターも、格差売りも、舞祭組も、すべてそのための行動だったと言えます。
まずは、若い女性に向けて前の3人を徹底露出してファンを獲得し、次に、サラリーマン(ついで子ども)に向けて後ろの4人(舞祭組)を売り出したワケです。
最も、この作戦がすべてのグループに当てはまるワケではありません。
グループそれぞれに個性があり、得意とするジャンルが異なり、ファン層も異なるので、売れるための戦略も異なるのです。
戦略に基づいた手段がすべて当たるとは限りません。ただ、戦略に基づいた行動をして効果測定を続けることで、その戦略が効果があるのかどうかを判断することはできます。
EXILEも、AKB48も、おそらく様々な戦略に基づいて行動しています。そして、戦略に基づいた作戦を打ち続けた結果、現在の地位を築くに至ったのです。
スタートは、みんな「問題児」から。そして、「花形→金のなる木」と育った結果が、現在です。
まずは「絞り込んだマーケットに向けて、徹底的に露出する」
そのためには、まずはどの層を狙って何から見せていくのか?
まずは、マーケットの絞り込みが重要なんです。