常識をひっくり返したところに、実はブルーオーシャンが眠っています。
自分にとっての当たり前は、人から見たら当たり前じゃないのです。
だったら、お客さまにとっての当たり前を自分の当たり前にするにはどうしたらいいのか?
常にひっくり返して考えましょう。
先日、「無料で読める「花より男子」新作、どうやって収益化するの?」という記事で、マンガを世に発表する新しいメディアとしてWebコミック(アプリ)をご紹介させていただきました。
マンガと言えば、雑誌掲載→単行本というのが定番ルートです。最近は、文庫化&コンビニコミック化&愛蔵版化orテレビドラマ化・映画化・ゲーム化などのメディアミックスも多くなっていましたが、Webコミックによって、さらに広がりを見せています。
これもマンガ業界を発展させようとする、苦肉の策なんでしょうか。
いわゆる出版不況&少子化の影響でしょうか、マンガ雑誌の発行部数は減る一方です。廃刊する雑誌は後を絶ちません。
ところが、こんな状況でも、次々ヒットを飛ばしているマンガ家さんはいらっしゃいます。「絵が上手いからマンガ家」なんて、もうつとまりません。どんなにいいマンガでも、商業的に成功するには、売れなければ意味がないのです。
商業的に成功することに徹して、マンガ制作に「マーケティングの考え方」を徹底的に取り入れているマンガ家さんがいらっしゃいます。
その人は、三田紀房さん。
テレビドラマは大ヒット、関連商品も続々販売されていた、あの「ドラゴン桜」の作者です。
「ドラゴン桜」は、元々破産寸前の底辺高校を立て直すためにやってきた東大出身の弁護士が、「東大進学者を出すことで知名度を上げて志願者を増やす」という奇想天外な作戦を立てて、ダメ高校生たちを東大に合格させようという物語としてスタートしました。
ところが、作中に次々登場する「東大に合格できる勉強術」が評判になり、物語の主軸は、高校改革ではなくて、難関大学に合格できる様々な勉強術を学べることになってしまったのです。
「今でしょ」の林修先生に代表される予備校の個性的な先生がクローズアップされたり、「勉強法本」ブームの火付け役になった作品、とも言えますね。
以前、テレビ番組で三田さんがマンガの発想法についてお話をされていたのですが、その時のお話がいちいちビジネスの組み立て方と呼応していたので、本当にびっくりしました。
例えば、こんな感じです。
●売れている商品の売れている理由を徹底的に調べて、とことん真似る
三田さんは、週刊漫画ゴラクで連載中、同じ雑誌でトップの人気だった「ミナミの帝王」を徹底的に研究し、「ミナミの帝王」の人気の要素をとことん自分の作品に盛り込んだ。結果、トップを取ることができた。
●競合は徹底的に避ける
自分が野球マンガを描きたいからと言って、人気のある野球マンガが連載されている雑誌に新たに野球マンガを描いても読者を惹きつけられない。野球マンガを描くなら別雑誌、あるいはテーマを変えてしまう。
ヒットの法則を見つけ出すことに時間をかけて、本当にヒットするのか綿密にリサーチをかけて、ヒットにつながる要因を掛け合わせる。
描くのはそれからなんですね。
元々、百貨店に勤めていて、実家の商売を継いだものの失敗、後がなくなって「稼ぐ手段」としてマンガ家になったという三田先生ならではの発想術です。
お世辞にも、決して絵がうまいわけではない三田さんの強みは「ビジネス経験」です。肌感覚としてビジネスを描けるマンガ家さんというのは、なかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。(「島耕作シリーズ」の弘兼憲史さんくらいしか……。ぱっと思い当たりません。)
さて、ビジネス目線で三田さんのマンガを読むとたくさんの気づきがあるんですけど、今回お伝えしたいのは、ヒットするテーマを三田さんがどのように見つけ出しているのか、という点についてです。
三田さんのマンガの舞台は、学校だったり会社だったり。日常に当たり前にある風景です。ところが、その風景に掛け合わせる要素が、とにかく変わっています。
一言で言うと、「常識ではありえないでしょ」なんですね。
三田さんが今連載している作品も、現代社会に爪を立てるような、刺激的な設定のお話です。
例えば、講談社モーニングで連載中の「インベスターZ」、テーマは「生徒による学校経営」です。
お話はこんな風に始まります。
北海道札幌市130年の伝統がある中高一貫の超名門男子校道塾学園は、開校以来生徒には一切金銭的負担がかからないという方針で運営されている。表向きは、創立者の莫大な遺産を受け継いでいるとなっているが、本当は数人の生徒からなる「投資部」が学校から委託された資金を「投資」で運用して学校経営を行っている。
毎年、成績第1位で入学した生徒が投資部に入ることが暗黙の了解となっており、その年に入学した成績第1位の生徒が投資部の部室に足を踏み入れたところから話が始まる。
いかがですか?
まず、テーマの絞り込み方がおもしろいですよね。
中高生が学校経営に関わるなんて、ありえない。
こんなわたしたちの常識を見事にひっくり返してくれています。
常識をひっくり返したところに、実はブルーオーシャンが眠っています。
自分にとっての当たり前は、人から見たら当たり前じゃないのです。
だったら、お客さまにとっての当たり前を自分の当たり前にするにはどうしたらいいのか?
常にひっくり返して考えましょう。