お客さまとは、よい関係性を築いて、長くお付き合いしていきたいですよね。
大切なお客さまの情報、とても価値のあるものです。
今は、インターネット全盛時代ですから、お客さまの情報といえばメールアドレスですが、ネット社会になる前は違いました。
ビジネスをするには、一人一人のお客さまと顔を合わせて情報を集める必要があったのです。このように集めた顧客リスト、どれほどの価値があるものなのでしょうか。
どうして富山で薬なの?
ブログ記事
ネット社会でも江戸時代でも、一番大切なものは同じ!
の続きです。
富山の薬売りの富山の薬売りが持つ顧客リスト「懸場帳(かけばちょう)」の仕組みには、「顧客視点のビジネス」のヒントが網羅されています。
そもそも、なぜ、富山県でそれほど製薬業がさかんなのか? ということなのですが、これもルーツは江戸時代にさかのぼります。
1690年、とある大名が江戸城中で腹痛を起こした時、二代目富山藩主の前田正甫(まえだまさとし)公が持っていた、越中富山の秘薬である「反魂丹(はんごんたん)」を分け与えたそうです。
すると、大名の腹痛はたちまち治まり、「越中富山の薬は効く」という噂が広まりました。
越中富山から諸藩への薬の販売が、認められるようになりました。
このことに驚いた諸国の大名が、自分の藩でも越中富山の薬を売って欲しいと懇請しました。藩主の前田正甫公もこのこと奨励したため、富山の売薬は有名になったとのことです。
当時は藩を越えて商売することは、厳しく規制されていたので、このようなことは非常に異例だったようです。
このような歴史があるので、今でもその伝統を受け継いで、富山では製薬、そして配置薬業が盛んなんですね。
懸場帳に秘められているスゴイパワー
さて、富山の薬売りの命ともいうべきなのが、顧客台帳「懸場帳」ですが、知れば知るほど、現代社会において、ビジネスを成功させるのに必要な戦略がすべて網羅されています。
懸場帳の大きな役割として、
顧客情報を詳細に記録しておくことで、次回のビジネスの戦略が立てられる。
があります。
懸場帳には、
お客さまの家族構成と健康状態
かかりやすい病気の傾向
よく使われる薬
1家庭ごとの売上高
1家庭ごとの在庫内容
など、お客さま家庭に関する様々な情報が書かれています。
そのため、お客さま家庭に対して、
健康に関する様々な助言
無駄のない有効な置き薬の提案
などに活用でき、お客さまとの信頼関係の向上に役立てることができます。
さらに、懸場帳を作成することで、
お客さま情報(支払・健康状態)の正確な把握
お客さま家庭の在庫状態の正確な把握
次回の商品別需要予測
今回の正確な利益計算と次回の収益予測
など、次回以降のビジネスにおける、無駄のない戦略の策定に活用することができます。
懸場帳、単なる顧客リストではなく、
売り手と買い手の相互信頼を維持向上させ、300年も脈々と受け継がれてきた富山売薬業というビジネスモデルを支え続けた営業戦略の柱となる貴重な経営資産なのです。
「懸場帳には、値段はつけられない。火事になったら、薬をあきらめてでも懸場帳を持って逃げる。」
と言われるゆえん、本当に納得できますね。
お客さま情報さえあれば、何でもできる!
今でも、顧客の家庭と継続的な関係性を築く必要のある業種(保険営業等)では、この仕組みを活用して、ビジネスを組み立てている企業もあるようです。
江戸時代、パソコンもインターネットもなかった時代、一つ一つ、足で稼いだ顧客リストにどれほどの価値があったのか、 想像できますね。
ドラッグストア全盛となった現在、配置薬業は右肩下がりのようですが、懸場帳さえあれば、「顧客が次に必要とするモノは何か?」と容易に想像できます。
顧客リストをもとにした、配置薬業発信の次のビジネスを立ち上げることはそれほど難しくはないのでしょうか?
だって、顧客リストがあるんですよ! 使わない手はないですよね。
配置薬業発の新ビジネス、期待してしまいます!
配置薬の考え方から生まれた新ビジネス、あります!
ちなみに、懸場帳ではありませんが、配置薬の考え方に基づいて大ヒットしているビジネスがあります。
利用したことがある!という方もいらっしゃると思うのですが……。なんでしょうか??
答えは、
オフィスの置き菓子「オフィスグリコ」です。
オフィスに専用の箱を用意して、お菓子を入れておく。社員はお金と引き換えにお菓子を食べる。グリコの担当者が定期的にオフィスをまわっって、料金を回収し、お菓子を補充していく。
ほら、薬がお菓子に置き換わっているだけですよ!
最近は、オフィスの置き野菜というサービスも始まっていると聞きました。
江戸時代に始まったこのビジネスモデル、まだまだイケそうですよ!