ビジネスにおいて、一番大切なのは、お客さまをつくることと言います。
どのくらい大切なのか??
それが非常によくわかるエピソードがあります。
最近、注目を集めている、ある県発祥の江戸時代から続くビジネスについてのお話です。
金沢、福井、富山。北陸がキテる!
今週始まった月9「恋仲」。
福士蒼汰くん主演のこのドラマ、福士くんたちの出身地が「富山県」と設定されているんですね。
へえ〜。なんか意外でした。
普通のテレビドラマだと、地方が舞台の原作だったとしても、設定を変えて東京近郊の話に改変するのは割と普通のことです。
例えば、唐沢寿明さん主演の「ナポレオンの村」も、元々は石川県羽咋市のスーパー公務員の方の話が、東京の山間部の限界集落の話に置き換えられています。
ところが、「恋仲」は、オリジナル作品なのに、舞台をわざわざ富山県にしている。
何かあるのかな〜?? ちょっと気になってしまいました。
と言うのも、北陸新幹線開通以来、「北陸」について、目にする機会が多くなりましたよね。
特に新幹線の終点・金沢は、テレビで特集される機会も増えていますし、前クールのドラマ「天皇の料理番」、主人公の篤蔵は福井県鯖江市の出身で、主演の佐藤健くんの「福井弁」にも注目が集まりました。
そして、富山。となると、そうです。お伝えするのは、あの話です。
富山の薬売り、ご存知ですか?
富山の薬売りという職業があります。ご存知でしょうか?
富山県は、現在でも製薬業が盛んです。それは江戸時代にさかのぼります。
富山の製薬業が生み出した独特のシステム、それは「富山の薬売り」と言われる配置薬業(置き薬)の形態です。
江戸時代の庶民にとって、薬は高価なもので、病気のたびに買うものでした。いざという時のために、薬を家に置いておく…という習慣はなかったのです。
このような状況で登場した、「富山の薬売り」の仕組みはこのようなものです。
1.配置薬業者が、家庭を訪問して、薬を預ける。
2.半年に1回、訪問を行って、使用した分の薬代を受け取る。
3.向こう半年分の新しい薬を預ける。
先に商品を預けておき、使った分だけ代金を受け取る。
配置薬業者が回る営業地域を「懸場(かけば)」と呼び、その地域の顧客台帳を「懸場帳(かけばちょう)」と言いました。
優れた提案型セールスマン!
この仕組みは、それまでの売薬と最も異なっており画期的で、時代の要請にも合っていました。
懸場帳には、詳しい顧客情報と薬購買履歴が書かれていたため、それさえあれば誰でも売上が確保できました。のちには懸場帳自体が財産価値を持ち、業者間で取引されるようにもなりました。
顧客の家庭を訪問する前に、懸場帳を見ておけば何が必要なのかがわかるので、事前にどのような提案をしたらよいか考えて、準備することができます。
つまり、事前に戦略が立てられるのです。
「富山の薬売り」は、薬の補充に行くだけの単なる御用聞きではなく、優れた提案型セールスマンだったのですね。
商品よりも懸場帳を持って逃げる!
現代風に言えば、お客さま名簿、顧客台帳とも言える「懸場帳」
火事になったら、薬をあきらめても懸場帳を持って逃げる
と言われるくらいのものでした。
さて、この富山の薬売りの懸場帳の仕組みには、「顧客視点のビジネス」のヒントが網羅されています。
続きは次回更新にてお伝えします。