お客さま不在のまま、先にモノを作っても売れないのです。
それは、技術に問題があるのではありません。お客さま目線のマーケティングが不足しているのです。
モノづくりの技術はある、でも、どうすれば「売れるモノ」が作れるのか、よしんばモノができたとしても、どこでどうやって売ればいいのか、こんな悩みを抱えている方は多いようですね。
この悩みを解決するためには、
「まず、お客さまは誰なのか?」「誰に買ってもらいたいのか」を考えることから始める。
ということに尽きるのですが……。
ひとつの例として、約2年前に聞いた話をシェアします。
当時、参加していた起業志望者が集まるセミナー後の懇親会でのこと。
参加者の一人Aさんという男性が、東北の被災地B市にボランティアに行った時の話をしていました。
Aさんは、B市の仮設住宅を訪問した時、自宅も仕事も奪われ、なにもなすすべがないまま、日々を過ごしている方々の姿を目の当たりにしたそうです。その中に、布製でかわいいお人形を作る技術を持っている方がいらっしゃいました。仮設住宅に住んでいる主婦の方々は、その方にお人形作りを習いに行くようになり、いつしか仮設住宅にはお人形作家が何人も生まれました。
ところが……。どんなにかわいいお人形を作っても、仮設住宅では、買ってくれる人がいません。次々作られていくお人形の数々。Aさんはその様子を見て、自分が一肌脱ごう!と決意したとのこと。
東京に戻ってきたAさん、早速、首都圏の某市で開催される大規模物産展を見つけました。そこに出品交渉をしている、というのが当時の状況でした。
Aさんが持っていたサンプルのお人形を見せてもらいました。地方の観光地のお土産物屋さんで良く見かけるタイプのお人形でした。
※写真は本文とは関係ありません。
Aさんの話を聞いて、支援を申し出たのが、ブランド品のリサイクルショップを手がけているCさん。何でも、ブランドカーテンの端切れも扱っているそうで、その端切れをお人形作りの材料として提供したいと、そこで話がまとまっていました。
その様子を見ながら、わたしは思いました。
どうして、今あるものを物産展で売ろうとするの?
同じ技術を使って、Cさんのお店に来るような人が買いたくなるものを作れば、もっと高い値段で売れるはずなのに。
お土産物屋さんで売っているようなお人形は、その土地のお土産物屋さんで買うから、価値を感じるものです。
首都圏のデパートの物産展で人気があるのは、現地に行かないと食べられないような食べ物ばかりですよね。カタチあるモノは、その土地で買ったという思い出も一緒に買うものなのですから、物産展ではそもそも買う人があまりいないでしょうし、第一、お土産物価格でしか売れないでしょう。
「被災地の仮設住宅で、被災者の女性が一から習って作った」というストーリーは、確かに人の心を打ちます。でも、それを全面に出して、「かわいそうだから」と同情の気持ちで売れたところで、どうなるのでしょうか?
お客さま不在のまま、先にモノを作っても売れない。
それは、技術に問題があるのではありません。お客さま目線のマーケティングが不足しているのです。
モノでもサービスでも、考え方は同じです。
どこの誰に買ってもらいたいのか。
徹底的に考えてから、商品開発してください。決して回り道ではありませんから。