要は、「理想のお客さま像の食い違い」がすべての問題の発端。としか、わたしには思えませんでした。
巻き込まれた方々は、本当にお気の毒でしたね。
昨日まで実家に帰っていたのですが……。その間、家族間で大いに話題になっていた時事ネタがありました。
それは「大塚家具経営権問題」
別に大塚家具の顧客でも株主でもないのに、株主総会の行方について、両親は興味シンシン。わたしにも「どっちが勝つと思う?」と聞いてきました。(余計なおせっかいだと思うんですけどね〜。笑)
さて、もう決着がついたので言うわけではないのですが、この問題についてのわたしの意見は、一貫して「娘の久美子社長がこのまま経営を続けたほうがいい」でした。
日本一オープンな親子ゲンカ
わたしが久美子社長に一票を投じた理由は、大きく2つあります。
1.「情」に訴える父親の勝久氏と、「理」で攻める娘の久美子社長。大塚家具という企業の今後を考えると、久美子社長の「理」こそが「投資家」の支援を得られると考えたからです。
勝久氏の言い分は「今までの自分のやり方が正しいはず。今までのやり方をきちんとやっていけば、必ずお客さまはわかってくれる」「娘に経営を委ねたのが失敗だった。育て方を間違えた」という、ある意味「情」に訴えるものでした。
大塚家具が非上場の企業であれば、この主張を通すことも筋といえば筋ですが、上場企業のトップが「お涙頂戴」とも受け取れる主張をしたところで、株主はシラけるだけです。
2.万一、勝久氏が勝ったとしても、近い将来同じような揉め事がまた起こりそうだからです。
「ずっと積み重ねたきたものをこれからも大切にしていく」という勝久氏の主張は、従来の顧客や取引先や従業員にとって、心地よいものかもしれません。
しかし、勝久氏も高齢です。近い将来、世代交代について考える時が必ずやってきます。その時、後継者となる人は、勝久氏の想いを受け継いでやっていくのでしょうか? どんな選択がなされるのかはわかりませんが、争点は違えど、同じような問題(というか、揉め事)はまた起こりそうです。
過去の成功事例は大いに参考にすべきです。しかし、世の中、お客さまの価値観は移り変わっていきます。「良い」「素晴らしい」という評価は、相対的なものです。勝久氏の主張する通り、「高級路線・広告重視・手厚い接客」を推し進めたところで、それは、今の顧客をつなぎとめる手段、いわゆる延命措置にしかならないですよね。
いかがでしょうか?
父と娘、決定的に違っていたのは……。
勝久氏の主張は、ブランドイメージを大切にした高級路線。久美子社長の「カジュアル路線への変更」は全否定でしたね。
「なんで、ウチがニトリやIKEAの真似をしなければならないのか?」
お気持ちはごもっとも。
でも、お客さまの気持ちはどうでしょうか?
「理想のお客さまは誰か?」という観点から、この問題について考えてみます。
勝久氏のイメージする理想のお客さまは「結婚や住居の新築など、人生の節目に家具を揃えたいと思っている人(家族)」ですよね。そのため、トータルコーディネートで買ってもらうことを前提としていて、ライフスタイルからライフプランまで、専門の販売員がきちんと接客して提案して販売するのが基本です。
ところが……。
今や、「家族単位」で物事を考えること、「結婚して子供を持つ」「家族で一緒に住む」ということ、もう今の日本ではスタンダードなものではなくなりつつあります。
ひとり暮らしで自分の趣味に合った生活を楽しみたい、ライフスタイルに合わせて臨機応変に住み替えをしたい、と考えている人にとっては「人生の節目に家具を揃える」いう選択肢そのものが存在しませんよね。
勝久氏のイメージしている理想のお客さま像は「今までの大塚家具の優良顧客像」、それに対して久美子社長のイメージしている理想のお客さま像は「これから大塚家具のファンになってくれそうなお客さま像」ですよね。
「高級路線」と「カジュアル路線」、「会員制」は是か非か、論点はいろいろあるように見えますが、
わたしには、そもそも二人の思い描いている理想のお客さま像が違っていることによって起こったボタンの掛け違え、にしか見えませんでしたね。
結果は娘の勝利。そして、これからめざすものは……。
ご存知の通り、株主総会の結果は、久美子社長側の勝利という結果でした。
これで騒動には、一応の終止符が打たれたということになるのでしょうが、この騒動の結果、ブランドイメージには甚大な傷がついてしまいました。
確かに久美子社長は勝ちましたが、だからと言って、自分の考えがすべて支持されているという状態ではないことは重々承知していることでしょう。
会社は、社長のためでもなく、会長のためでもなく、お客さまのために存在している。と言うものの、商売に不可欠な信用、お客さまとの信頼を犠牲にしてまで決着をつけた結果、これからどうしていくのか、本当に真価が問われますね。
久美子社長のイメージしている「これから大塚家具のファンになってくれそうなお客さま」に向けて、どのようなメッセージを出していかれるのか、注目したいと思います。