先週の日曜日。総選挙の日に開催された「THE MANZAI 2014」決勝大会。
もう、みなさん、結果はご存知だと思いますが、博多華丸・大吉が優勝しましたね。
本当におもしろかったんですけど、今年に関していうと、彼らにとっての強い追い風が吹いていました。
彼らはその風に乗って、千載一遇のチャンスをものにしたと言えるのです。
1回戦
つかみは、華丸さん坊主の理由。
そして、ネタは「ユーチューバーになりたい」
おじさん世代代表の華丸さん、
お昼ご飯と仲間と酒を飲むこととゴルフをこよなく愛する華丸さん、
その華丸さんが、ユーチューバー。
華丸さんのキャラと、やりたいと言ってることのギャップ感、ハンパないです。
笑うしかないですよ。
開始5秒で、わたしは「華丸・大吉が勝つかも」と思いました。
決勝
華丸さん、再び「ユーチューバーになりたい」
大吉さん「劇場の二回公演じゃないよ」
ここで、審査員席の西川きよしさんが、手を叩いて喜んでいましたね。
ネタは、テレビでも披露したことのある鉄板の「宴会の抜け出し方」
普段、劇場でいつもやっている、当たり前のネタを当たり前にやってみせる。それが一番おもしろかったという結果でした。
審査員のテリー伊藤さんが「球速160kmのピッチャーが140kmで投げてるみたい」と言っていましたが、まさしくその通りでした。
今年の大会、実は、こんな漫才が求められていました。
わかりやすく、どんな世代の視聴者にとってもおもしろい漫才。
その要求に最も応えられたのが、華丸・大吉だったワケです。
なぜ、こんなことになったのか?
それは、昨年のこの大会で、ウーマンラッシュアワーが優勝したことに大いに関係があります。
ウーマンラッシュアワーの漫才の持ち味は、高速でたたみかけるボケの連発です。
昨年は、漫才に勢いと臨場感があるという彼らの持ち味が最高に評価されました。
彼ら以外に、近年評価が高かった漫才は、NON STYLEに代表される、いわゆるボケ量産系。
彼らのウリは、しゃべくりをはるかに超えた言葉の連発です。
ゆったりしたペースで、「最小の言葉数」と言われたスリムクラブのような漫才も、一応の評価は受けていましたが、どちらかというと変化球。
「時代の王道=スピード感重視」方面に確実に振れていました。
しかし、何事も過ぎたるは及ばざるが如し。
彼らの漫才、若い世代には絶大な支持を受けることができたものの、年配の世代にとっては、なかなか受け入れられなかったのです。
大会後、志村けんさんが、「早すぎて何を言ってるのか理解できない。俺たちの世代は笑えないと思う」というコメントをされていましたが、要するにそういうことです。
「ああいうのが、今の時代はおもしろいと言うのか……。」
世間で評価される漫才の潮流から取り残されてしまった感を抱いた年配のお笑いファンは、自分たち世代が掛け値なしで楽しめる笑いを求めていました。
「スピード感・勢い・臨場感」方向に漫才の潮流が振れ切った結果、
「ゆっくり・わかりやすい・安心して笑える」
潮流への揺り戻しが起きようとしていたのです。
そこに登場したのが、2年ぶりにこの大会に出場した華丸・大吉。
「待ってました!」
そうなんです。
今年の大会の空気感が、まずは、彼らに味方してくれていたのです。
そして、ネタ。
おもしろい小説、売れる小説は、最初の1行で決まると言いますが、
彼らの漫才にはそれがありました。
世の中の潮流というものは、変えられません。
でも、寄せては返す波のように、潮の満ち引きが起きるように、何事にも揺り戻しはあるのです。
無理せず、タイミングを見て、波に乗る。
力任せに突き進むよりも、案外こんなやり方のほうが、万事うまくいくのかも。ですよね。