ブランドを生み出し、後世に伝えていくのは、ひとりではできません。必ず誰かの手を借りなければできないものです。
「何をめざし、何を求めているのか」「どのような世界をつくりたいのか」
自分の想いを、言葉で、カタチで、伝わるように見える化することと、伝承の担い手を育て続ける必要があるのですね。
Bunkamuraザ・ミュージアム マリメッコ展
先日、2月12日(日)Bunkamuraザ・ミュージアム(渋谷)で開催されていた「マリメッコ展」に行ってきました。
鮮やかなプリント柄ファブリックのシリーズの数々、ご存知の方も多いことでしょう。
わたしが訪れた12日は最終日。多くのお客さまが詰めかけていて、男性の方も多かったのが印象的でした。
プリントの原画、プリントファブリック、ファブリックを使った製品の3つがセットになって展示されていることが多く、ものづくりのプロセスを垣間見ることができ、興味深かったです。
展覧会を見終えて思ったのは、マリメッコは、創業当時から現在に至るまで、複数のデザイナーが関わっていて、なおかつ経営者も変わっているのに、創業当時のブランドイメージが現在まで本当によく受け継がれているなあということです。
もちろん、ひとつひとつのプリントの柄は違いますし、時代によってデザインの変化はあります。なのに、ブランドとしての一体感を感じるんですね。
マリメッコ、ブランドの特徴
マリメッコは、フィンランドの会社です。プリントファブリックを活かしたファッションやインテリアの会社として、1951年にスタートしました。今年は創業66年になります。
全ての商品は「素材ありき」「プリントありき」からスタートしていて、ロングセラーのプリントデザインは、現在でも様々な商品に使われています。元々、インテリア用のデザインだったものが、現在ではアレンジされてファッションアイテムに使われていることも多いのだとか。
マリメッコというのは、アルミ・ラティアという女性が「夫が買収したプリントファブリックの会社用に友人のデザイナーにプリントデザインを頼んだところ、とても良いデザインが上がってきたので、このプリントで製品をつくりたい!」と始めた会社だそうです。
アルミの友人のデザイナー、マイヤ・イソラは、有名なプリント柄ウニッコ(けしの花)の生みの親でもあります。
ウニッコ(けしの花)
マイヤの他にも優秀なデザイナーが次々とマリメッコに関わり、多くのデザインを生み出しました。
初期のころのマリメッコのデザイナーは、画家やインテリアデザインの出身者が多かったそうです。あくまでも「デザイン、素材」を活かすものづくりをめざしていたのですね。
デザインを担当しないで、ブランドイメージを伝えるには?
写真をお借りしました。(Lottaと歩く吉祥寺)
マリメッコという会社がなぜ現在に至るまで、ブランドイメージを保ち続けているのか?
展覧会を見ながら、考えてみました。
創業者のアルミは、専門デザイナーではありませんでした。彼女自身がブランドアイコンというわけではなかったようです。
彼女は、会社を導く立場として、自分がデザインに深入りすることよりも、自分がめざす世界観をデザイナーたちに伝えて、それらを具現化する役割を託していたのではないでしょうか。
マリメッコ創業当時のプリントデザインは抽象画風の幾何柄ばかりでした。これは、アルミが「花はプリントのデザインには使わない」という方針だったからだとか。
ところが、その後、マイヤが生み出したウニッコが世界的な人気になったのですから、わからないものです。
ただ、アルミの「花を使わない」の真意は「デザインで本物の花は超えられない」だったとすると、ウニッコはリアルフラワーを超える素晴らしいデザインだったということですよね。
その後、マリメッコでは、花をモチーフとした素晴らしいデザインが幾つも誕生しています。
当時、そして今でも、マリメッコでは「小さなマリーのためのドレス(マリメッコの意味)には、何がふさわしいのか」と常に考えながら、ものづくりが行われているのでしょう。
それは、経営者が変わっても、変わらず引き継がれているのではと思います。
めざすものを明確にして、言葉とカタチで伝える。
ブランドを生み出し、後世に伝えていくのは、ひとりではできません。必ず誰かの手を借りなければできないものです。
「何をめざし、何を求めているのか」「どのような世界をつくりたいのか」
自分の想いを、言葉で、カタチで、伝わるように見える化することと、伝承の担い手を育て続ける必要があるのですね。
こういうことは、実は個人のブランディングを考える時、わたし自身があまり意識してこなかった部分です。
しかしながら、仲間を増やして、ブランドとしての存在価値を高めて、ゆくゆくは社会貢献に役立てるように……!と考えると「自分ひとりがわかっていればいい」ということでは済ませられないものです。
良いブランドを後世に伝えていくために、やることはまだまだある!と想いを新たにしました。